※本記事はアフィリエイト広告を含みません。公的機関(国土交通省「自賠責保険・共済ポータルサイト」)の情報に基づく解説です。確認日:2026年10月22日。
この記事の要点
- 政府保障事業(自動車損害賠償保障事業)は、ひき逃げや無保険車の事故で自賠責保険・共済に請求できない被害者を、政府(国土交通省)が最終的に救済する制度です。
- 支払限度額は自賠責保険・共済と同じです。傷害120万円、死亡3,000万円、後遺障害は障害の程度に応じて75万円~4,000万円(常時介護は4,000万円)です。
- 請求は被害者本人(死亡の場合は法定相続人や遺族など)が、損害保険会社・共済組合の窓口で受け付けてもらいます。保険代理店では受け付けていません。
- 健康保険や労災保険などの他の社会保険の給付分や、加害者側がすでに支払った額を引いた残りを、国がてん補します。
- 時点ごとの請求期限(3年)が決まっています。傷害は事故発生日から、後遺障害は症状固定日から、死亡は死亡日から3年以内です。
自賠責保険・共済は、すべての自動車への加入が義務ですが、加害者が保険に加入していない「無保険車事故」や、加害者が不明の「ひき逃げ事故」では、被害者は自賠責保険・共済に請求できません。こうした事故の被害者を支えるのが、自動車損害賠償保障法に基づく「政府保障事業」です。政府(国土交通省)が自賠責保険・共済と同等の限度額の範囲で損害をてん補し、支払った分はあとで加害者などへ求償します。本記事は、国土交通省の自賠責保険・共済ポータルサイト(確認日:2026年10月22日)の説明に基づいて、対象・補償額・請求方法・自賠責との違いを整理した解説です。法律や補償の判断が必要な場合は、記事末尾の相談先や専門家にご確認ください。
政府保障事業とは何か
国土交通省の説明によると、政府保障事業(政府の自動車損害賠償保障事業)は、自賠責保険・共済の対象とならない「ひき逃げ事故」「無保険車(共済)事故」に遭われた被害者に対し、法定限度額の範囲内で、健康保険や労災保険などの他の社会保険の給付や、本来の損害賠償責任者の支払によってもなお被害者に損害が残る場合に、最終的な救済措置として政府(国土交通省)が損害をてん補する制度です。
根拠となる法律は自動車損害賠償保障法(自賠法)で、国土交通省のポータルサイトの説明では、政府保障事業はこの法律に基づくとされています。事業の原資は自賠責保険・共済の加入者からの賦課金で、国土交通省の説明では、令和8年度予算で国の賦課金収入は4億円、自家用乗用車1台あたり年間4円としています。
実績も紹介しておくと、政府保障事業の近年の取扱件数・支払実績は、国土交通省の発表では令和7年度に受付382件(ひき逃げ225件・無保険157件)、支払287件、支払保障金額444百万円(延べ)とされています(年度末時点、単位は百万円)。死亡事故や後遺障害の有無などで各年度の支払額は変動し、受付年度の翌年度に支払う事案があるため、受付件数と支払件数は一致しないとされています。
自賠責保険・共済との3つの相違点
政府保障事業によるてん補は、自賠責保険・共済の支払基準に準じて行われます。ただし、国土交通省の説明では、次のような点が自賠責保険・共済と異なるとしています。
| 項目 | 自賠責保険・共済 | 政府保障事業 |
|---|---|---|
| 誰が請求できるか | 加害者請求・被害者請求の両方があります(自賠責側の詳細は「自賠責保険と任意保険の違い」の記事を参照) | 請求できるのは被害者のみ(加害者からは請求できません) |
| 他の社会保険の給付 | 自賠責の支払と他給付の関係は別途定められています(詳細は未確認) | 健康保険・労災保険などの給付を受けるべき場合、その金額を差し引いててん補します |
| あとで返す義務 | 保険会社(共済組合)が被害者へ支払います。自賠責側の求償規定の詳細は本記事では未確認です | 政府が被害者へてん補した額を限度として、加害者等(損害賠償責任者)に求償します |
※表中の自賠責側の記載は、本記事の資料(国土交通省のページ)で確認できた範囲と、既存記事の内容です。確認できていない詳細は「未確認」と書いています。
求償の仕組みも特徴的です。加害者が自賠責保険(共済)に加入しておらず、国が加害者に代わって被害者に損害をてん補した場合、国土交通省は被害者が持つ損害賠償請求権を代位取得し、加害者など損害賠償責任者に対して求償します。損害賠償責任者が弁済しない場合、国は裁判所に訴訟を提起し、判決に従って自動車・土地・建物・給与などの差し押さえを行って回収するとしています。また、被害者が国民健康保険や労災保険などの各種社会保険を利用した場合は、国土交通省以外の政府機関からもその損害賠償額を求償されるとされています。
支払限度額は自賠責と同じ
政府保障事業の損害てん補は、自賠責保険・共済と同じ法定限度額の範囲内で行われます。国土交通省の説明では、自賠責保険・共済の限度額は、被害者1人につき次のように設定されています。
| 損害の種類 | 支払限度額(被害者1人あたり) |
|---|---|
| 傷害による損害 | 120万円 |
| 死亡による損害 | 3,000万円 |
| 後遺障害(神経・精神・胸腹部臓器の著しい障害で介護を要する場合) | 常時介護を要する場合(第1級)4,000万円/随時介護を要する場合(第2級)3,000万円 |
| 後遺障害(上記以外) | 第1級3,000万円~第14級75万円 |
また、次のような場合は支払う金額が減額されます(国土交通省の説明)。被害者に重大な過失があった場合と、受傷と死亡・後遺障害との間の因果関係の判断が困難な場合です。
政府保障事業では、法律に基づいて損害てん補の基準(塡補基準)が定められ、自賠責保険・共済の支払基準に準じて、法定限度額の範囲内で損害を積算して算定されます。健康保険や労災保険などの他の法令に基づく給付額や、損害賠償責任者からの支払額等は控除されます。
請求の窓口と方法
請求は、損害保険会社(共済組合)の全国各支店等の窓口で受け付けます。保険代理店では受け付けていないため、国土交通省の説明にあるとおり、直接、損害保険会社(共済組合)の窓口へ請求してください。窓口となる会社は、国土交通省の掲載(令和6年10月1日現在・五十音順)では、あいおいニッセイ同和損害保険、AIG損害保険、共栄火災海上保険、セコム損害保険、全国共済農業協同組合連合会、全国自動車共済協同組合連合会、損害保険ジャパン、東京海上日動火災保険、三井住友海上火災保険など、損害保険会社および共済組合です。
業務の分担も決まっています。政府保障事業のうち受付・支払・調査の業務は損害保険会社(共済組合)に委託され(調査はさらに損害保険料率算出機構に再委託)、審査と決定は国が行います。請求できるのは被害者本人で、死亡の請求では法定相続人および遺族慰謝料請求権者(被害者の配偶者、子、父母)が請求者になります。被害者が未成年の場合は親権者等が請求者となり、請求の委任は第三者にできます。
請求期限(時効)は請求区分ごとに決まっています。傷害は事故発生日から3年以内、後遺障害は症状固定日から3年以内、死亡は死亡日から3年以内です(国土交通省の説明)。症状固定とは、症状が安定し、医学上一般に認められた医療を行ってもその医療効果が期待できなくなった時をいい、医師により判断されます。
必要な書類の例は、損害の塡補請求書、交通事故証明書(人身事故扱いのもの。自動車安全運転センターで発行)、事故発生状況報告書、診断書・診療報酬明細書などです。後遺障害の請求では後遺障害診断書が、死亡の請求では戸籍(除籍)謄本や死体検案書・死亡診断書が必要とされています。書類は原則として原本の提出が必要で、このほかにも必要となる書類がある場合があります。書類の詳細は、損害保険料率算出機構のホームページで確認できます。
政府保障事業のてん補の対象にならない主な場合
国土交通省の説明では、次のような場合には請求しても対象にならないとされています。事故の状況によって救済の受け方が変わるため、整理しておきます。
| てん補の対象にならない主な場合 | 補足(国土交通省の説明) |
|---|---|
| 示談が成立して賠償金が支払われている場合 | 被害者と加害者の間で人身事故の示談が成立し、条項どおりに履行・支払いされている場合 |
| 自損事故 | 交通事故証明書が「車両単独・転倒」など、他車の存在や因果関係が認められない場合 |
| 被害者の一方的な過失による事故 | 被害者側の100%過失の場合 |
| 自賠責に請求できる事故 | 被害車両の同乗者で被害車両にも過失がある場合など。複数の自動車事故でいずれかの自賠責に請求できる場合も含む |
| 加害車両が自賠責の対象外車種 | 小型特殊自動車(小型耕運機など)や軽車両(自転車など) |
| 任意保険・共済からすでに支払いを受けている場合 | その損害についての支払いがある場合 |
| 物の損害のみの場合 | 車両の損害など。人身の損害が対象 |
| 後遺障害が施行令別表に該当しない場合 | 自動車損害賠償保障法施行令別表に定める等級に達しない・該当しない場合 |
| 時効消滅 | 政府保障事業に対する請求権がすでに消滅している場合 |
相談の窓口
支払や請求内容について心配がある場合、国土交通省のポータルサイトでは、日弁連交通事故相談センター(弁護士による電話相談・面接相談。0120-078325、平日10:00~19:00。政府保障事業を含む損害賠償問題を扱う)と、自賠責保険・共済紛争処理機構(自賠責保険金・共済金の支払に関する紛争の調停)が紹介されています。政府保障事業の請求に必要な書類などは、損害保険料率算出機構のホームページにも掲載されています。
まとめ
政府保障事業は、ひき逃げや無保険車事故などで自賠責保険・共済に請求できない被害者を国が支える最終的な救済制度です。補償額は自賠責と同じ限度額内、請求は被害者本人(死亡時は法定相続人・遺族など)から損害保険会社・共済組合の窓口へ、期限は事故の区分ごとに3年です。健康保険や労災保険などの給付分を引いた残りを国がてん補し、支払った額は加害者へ求償されます。自損事故や被害者側の100%過失など、対象にならない場合も決まっています。
任意保険の保険料と補償を考えるときにあわせて読める記事として「任意保険料の相場は?年齢条件・等級・車両保険で変わる仕組み」があります。車の税金全体を整理した「車の税金はいくら?自動車税・重量税・環境性能割・自賠責の違い」も参考にしてください。
※本記事はアフィリエイト広告を含みません。
出典と確認日
- 国土交通省「自賠責保険・共済ポータルサイト」:https://www.mlit.go.jp/jidosha/jibaiseki/(確認日:2026年10月22日)
- 国土交通省「政府保障事業」:https://www.mlit.go.jp/jidosha/jibaiseki/public_payment/index.html(確認日:2026年10月22日)
- 国土交通省「損害賠償を受けるときは?」:https://www.mlit.go.jp/jidosha/jibaiseki/accident/nopolicyholder/index.html(確認日:2026年10月22日)
※実際の請求・補償の扱いは事故の状況ごとに異なります。本記事の説明は法律・保険の判断を助言するものではありません。必要に応じて相談先や専門家に確認してください。
