※本記事にはアフィリエイト広告・商品リンクは含みません。公的機関の一次情報に基づく制度解説です。確認日:2026年11月3日。
2025年(令和7年)7月8日から、自動車の点検整備記録簿を「紙」で車に備え付ける必要がなくなり、スマホなどの電子的な方法で保存してもよくなりました。整備工場が電子的に記録簿を発行できる時代が来ています。
一方で「電子でいいなら自由」というわけでもありません。提示の場面では紙が必要で、しかも表示できない状態は点検整備未実施として扱われる場合があります。このページでは、法令の条文と国交省の運用通知をもとに、何がいつ変わったのか、车主として何をしておくべきなのかを整理します。
情報の確認方法:制度の内容と施行日は国土交通省の報道発表資料と解説の資料、電磁的記録の取扱いは国交省の運用通知の別紙、条文はe-Gov法令検索(道路運送車両法と関係省令・政令)、記載事項と保存期間は国交省「自動車の点検及び整備に関する手引」で確認しています。確認日は2026年11月3日です。
この記事の要点
- 2025年7月8日、国土交通省が自動車整備の事業規制を見直し、そのうちの1つとして「電子」点検整備記録簿が解禁されました。施行日は公布と同じ日です。
- 紙に代えて電磁的な方法で保存できるのは2つの方法だけです。スマホなどの電子媒体にファイルとして保存する方法と、記録簿をスキャナで読み取って保存する方法があります。
- ただし検査の場で記録簿を提示する場合は、例外なく紙の記録簿を提出しなければなりません。電子データだけを保存していても、車検でそのまま提示できるとは限りません。
- 通常の車検(継続検査)で提出する書類にも点検整備記録簿が入っています。記録簿がないと継続検査の受付で不具合が起こることがあります。
- 保存期間は自家用乗用自動車などが2年間、その他の自動車が1年間。特定整備については別の記録簿があり、これは電子データで受け取れます。ただし本人の承諾が前提となります。
先に結論
点検整備記録簿は、2025年7月8日からスマホなどの電子的な方法でも保存できるようになりました。ただし制約が2つあります。ひとつは、運輸支局や自動車検査登録事務所で検査を受けるときに記録簿を提示する場合は、紙の記録簿を提出する必要があること。もうひとつは、電子データでも「直ちに明瞭な状態で表示でき、かつ第三者が内容を読める」状態でなければ、点検整備未実施として扱われることです。導入によって記録義務が軽減されたわけではありません。記録は義務のまま、扱える手段が広がっただけです。
2025年7月8日に何が変わったのか
2025年7月8日、国土交通省は報道発表「これからも自動車を安心・安全に使用できる社会に向けて ~時代に合わせた整備事業規制のアップデート~」を公開しました。7つの見直しの中に、「『電子』点検整備記録簿の解禁」が含まれます。
この見直しの骨子は、次の一文に集約されています。
「紙」の点検整備記録簿の車両への備え付けに代えて、携帯電話等への「電子的方法」による保存でも可とする(ただし、求められた場合に速やかに提示できること)
公布日と施行日は次のとおりです。電子記録の解禁は公布の日から適用されています。
| 見直し項目 | 公布日 | 施行日 |
|---|---|---|
| 5.「電子」点検整備記録簿の解禁 | 2025年7月8日 | 2025年7月8日(公布の日) |
| 7.スキャンツール等による点検可能範囲の拡大 | 2025年7月8日 | 2025年10月8日 |
| 3.自動運転車の検査員要件の強化 | 2025年7月8日 | 2029年4月1日 |
制度の名は「整備事業規制のアップデート」ですが、车主にとって意味があるのは1点だけです。それまで「紙に書いて車に備え付ける」だった記録簿に、電子という選択肢が加わりました。記録義務がなくなりましたわけではありません。
記録簿の正体は何か|用語の整理
「記録簿」というと1種類のように聞こえますが、法令上は3つに分かれています。混同しやすいので、ここでは整理します。
| 名称 | 根拠 | 誰の義務か |
|---|---|---|
| 点検整備記録簿 | 道路運送車両法第49条 | 自動車の使用者 |
| 特定整備記録簿 | 同法第91条 | 自動車特定整備事業者 |
| 指定整備記録簿 | 同法第94条の6 | 指定自動車整備事業者 |
点検整備記録簿は何を記載する義務があるか
道路運送車両法第49条は、自動車の使用者に対し、点検整備記録簿を当該自動車に備え置き、点検又は整備をしたときは遅滞なく次の事項を記載することを求めています。
- 点検の年月日
- 点検の結果
- 整備の概要
- 整備を完了した年月日
- その他国土交通省令で定める事項
「その他国土交通省令で定める事項」の中身は、国交省「自動車の点検及び整備に関する手引」に記載事項と記載要領として具体的に示されています。手引の最終改正日は2025年7月8日で、電子解禁と同じ日です。
| 手引の記載事項 | 中身 |
|---|---|
| ⑴ 点検の年月日 | 点検を実施した年月日 |
| ⑵ 点検の結果・整備概要 | 点検項目ごとのチェック記号。交換した部品や測定結果も必要なに応じて記載 |
| ⑶ 整備を完了した年月日 | 整備を完了した年月日 |
| ⑷ 車台番号・自動車登録番号 | 車載の自動車検査証または軽自動車届出済証を見て記載 |
| ⑸ 点検時の総走行距離 | 積算距離計(オドメータ)による数値 |
| ⑹ 点検又は整備を実施した者の氏名又は名称および住所 | ユーザーが実施した場合は住所の記載を省略できる。点検と整備の実施者が異なるときは両者を記載 |
記録には作業区分ごとのチェック記号を使います。点検の結果、異状がなかったものは「-」、部品やオイルの交換は「○」、修理は「×」、調整は「△」といった使い分けです。特定整備を行った場合は、チェック記号を「○」で囲むなどして記録します。特定整備の記録があるかどうかは、この記号で判別できます。
保存期間はどのくらいか
保存期間は手引に明記されています。自家用乗用自動車などが2年間、その他の自動車が1年間です。手引は、この記録簿を可能な限り長期間保存し、自動車の「生涯記録簿」として活用することが望まれると記しています。
電子で保存するときのルール|施行規則と運用通知
電子的な方法での保存を定めるのは、「民間事業者等が行う書面の保存等における情報通信の技術の利用に関する法律施行規則」(平成17年国土交通省令第26号)です。第4条が電磁的記録による保存の方法を定めています。道路運送車両法関係では、第49条第1項・第3項の保存と、第91条第1項・第3項、第94条の6第1項・第2項、第96条の10第1項などが対象として列挙されています。
認められた保存方法は2つだけ
| 方法 | 内容 |
|---|---|
| ① ファイルとして保存 | 施行規則第6条で作成した電磁的記録を、電子計算機に備えられたファイルまたは電磁的記録媒体で保存 |
| ② スキャンして保存 | 書面記載事項をスキャナ(これに準ずる画像読取装置を含む。)で読み取った電磁的記録を保存 |
保存だけでなく作成にも同じ枠組みが使われます。第6条が「スマートフォン等の電子媒体に備えられたファイルに記録する方法又は電磁的記録媒体をもって調製する方法」による作成を認めており、これを「整備記録システム」と呼びます。コンピュータ、端末、通信装置、プリンタ、プログラムなどで構成され、記録簿の電磁的記録を作成・保存するシステムです。
表示できる状態であることが要件になる
施行規則第4条第2項は、保存に加えて、次の措置を講じることを求めています。
必要に応じ電磁的記録に記録された事項を、直ちに明瞭な状態で、その使用に係る電子計算機の映像面に表示及び当該事項を記載した書面を作成することができる措置
国交省の運用通知(別紙)は、この「直ちに明瞭な状態で示すこと」の具体例を3つ挙げています。どれも、第三者が内容を読み取れることが条件です。
- スマホなどの電子媒体自体に記録を保存しており、その映像面に即座に表示でき、第三者も内容を読み取れる。
- 記録を保存したSDカードやUSBメモリを接続し、画面に表示でき、第三者も内容を読み取れる。
- クラウドに保存した記録をスマホから表示でき、第三者も内容を読み取れる。
逆に、次のような場合は「直ちに明瞭な状態で示すこと」に該当せず、点検整備未実施として取り扱うとされています。
- スマホは持っているが、故障、バッテリー切れ、電波の状況など、理由の如何を問わず直ちに表示できない。
- 操作に不慣れで、直ちに表示できない。
つまり、保存しただけでは安心できません。表示できない状態は事実上未実施と同じ扱いになります。クラウドにだけ保存する場合も、問2の解答には「自動車の使用者が点検整備記録簿に係る情報を速やかに把握でき、地方運輸局長等から提示を求められた際に直ちに明瞭な状態で示すことができる場合には、法第49条第1項の『備え置き』 に該当する」とあります。ただしこれは条件付きです。
検査で提示する場合は紙が必要
ここが最も落とし穴になりやすいところです。運用通知の第2の1.(5)(事業者側)と第3の1.(4)(使用者側)は、どちらも同じことを定めています。
運輸支局、自動車検査登録事務所又は軽自動車検査協会の事務所若しくは支所において検査を受けようとするときに点検整備記録簿を提示する場合にあっては、書面の点検整備記録簿を提示すること
つまり、提示が要る場面では電子データは代用になりません。継続検査・臨時検査・構造等変更検査を受けるときは、施行規則第39条に基づき、点検整備記録簿を提示する義務があります。電子保存が解禁された一方で「提示は紙」という線引きは残されています。
車検との関係|記録簿がないと何が起きるか
記録簿は車検の書類にも含まれます。自動車検査登録総合ポータルサイトの「ユーザ自身が検査手続を行う方法」では、継続検査(車検)で提出する書類として、点検整備記録簿が列挙されています。定期点検整備の時期が検査の前、後どちらでもよいとされ、点検整備記録簿には点検・整備の作業内容をチェック記号に従って記載します。整備工場で実施した項目は、その工場に作成してもらえばよい、という説明です。
さらに、国交省「車検時の点検整備実施状況のお知らせ」には、車検前に定期点検整備を行わず、車検後に定期点検整備を行うことを「前検査(後整備)」と呼ぶ説明があります。車検時に定期点検整備記録簿を確認したうえで、車検証備考欄に定期点検整備の実施状況を記載するとのことです。2014年2月(軽自動車は2015年1月)からの仕組みで、電子車検証ではICタグに記録されます。記載内容は後から変更できません。
記録簿には法的効力があります。道路運送車両法第54条第4項は、地方運輸局長が整備を命ずるとき、点検整備記録簿の有無および記載内容などを確認した結果、法定の定期点検が行われていないことが判明した場合には、点検と必要に応じた整備を勧告することができるという定めです。つまり、記録簿は点検の事実を後から示せる資料として働きます。
特定整備記録簿は電子データで受け取れる
特定整備記録簿は、道路運送車両法第49条第2項に定められた特定の整備の記録です。特定整備とは、同項で「原動機、動力伝達装置、走行装置、操縦装置、制動装置、緩衝装置、連結装置又は自動運行装置を取り外して行う自動車の整備又は改造その他のこれらの装置の作動に影響を及ぼすおそれがある整備又は改造」と定義されています。施行規則第11条により、この記録簿の写しは電磁的記録で交付できます。交付方法は次の3とおりです。
- 事業者から利用者のスマホへ電子メールでデータを送信する。
- 利用者が事業者のウェブサイトやクラウドにアクセスしてダウンロードする。
- 電磁的記録媒体に記録したものを受け渡す。
ただし条件が2つあります。ひとつは、利用者がデータを出力して書面を作成できるようにしておかなければならないこと(施行規則第11条第2項)。もうひとつは、電磁的方法で交付する前に、あらかじめ交付する方法を明示して、利用者から書面または電磁的方法による承諾を得る必要があることです(施行規則第12条および政令第2条第1項)。さらに、承諾が得られなかった場合や、承諾後に利用者が撤回を申し出た場合には、電磁的記録による交付をしてはいけません(政令第2条第2項)。
保存義務にも違いがあります。特定整備記録簿は第91条第3項により、指定整備記録簿は第94条の6第2項により、いずれも「その記載の日から二年間保存」する義務が事業者にあります。一方、「点検整備記録簿」の作成義務と保存義務は、自動車特定整備事業者も指定自動車整備事業者も負っていません。通常の使用者が依頼して整備を受けた場合に作成される、という位置づけです。運用通知の注記では、その点を明示しています。
確認するためのチェックリスト
実際に運用するうえで、確認できる項目をまとめました。
- 電子保存をするなら、スマホやタブレットなど表示できる機器に記録があるか。クラウドだけに保存していないか。
- その機器がバッテリー切れや電波の悪い場所で開いて、即座に記録を表示できるか。第三者が読めるか。
- 車検(継続検査)の当日、紙の記録簿を提示できる状態にあるか。電子だけでは不十分。
- 記録に、点検の年月日・点検の結果・整備の概要・整備完了年月日・車台番号と登録番号・点検時の総走行距離・実施者の氏名が揃っているか。
- 特定整備の記録がある場合、チェック記号が「○」で囲まれているか。
- 記録が2年(自家用乗用自動車など)を超えて、長期間残っているか。
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出典(2026年11月3日確認)
- 国土交通省 報道発表「これからも自動車を安心・安全に使用できる社会に向けて ~時代に合わせた整備事業規制のアップデート~」(2025年7月8日):7項目の見直しの概要と公布日・施行日。
- 国土交通省(参考)各アップデートの解説(PDF):「5.『電子』点検整備記録簿の解禁」の説明とスケジュール表。
- 国土交通省「点検整備記録簿、特定整備記録簿及び指定整備記録簿の電磁的方法による作成、保存又は交付に関する取扱い」(PDF):使用者と事業者の遵守事項、Q&A、紙提示の要件。
- 国土交通省「自動車の点検及び整備に関する手引」(最終改正2025年7月8日、PDF):点検整備記録簿の記載事項・記載要領、作業区分のチェック記号、保存期間。
- e-Gov法令検索「道路運送車両法」(昭和26年法律第185号):第47条の2・第48条・第49条・第54条第4項・第91条・第94条の6。
- e-Gov法令検索「国土交通省の所管する法令に係る民間事業者等が行う書面の保存等における情報通信の技術の利用に関する法律施行規則」(平成17年国土交通省令第26号):第4条・第6条・第11条・第12条、別表第一・第二・第四。
- e-Gov法令検索「民間事業者等が行う書面の保存等における情報通信の技術の利用に関する法律施行令」(平成17年政令第8号):第2条(電磁的方法による承諾、撤回時の不交付)。
- 自動車検査登録総合ポータルサイト「ユーザ自身が検査手続を行う方法」:継続検査で提出する書類と点検整備記録簿の扱い。
- 国土交通省「車検時の点検整備実施状況のお知らせ」:前検査(後整備)と車検証備考欄への定期点検整備実施状況の記載。
